とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

雑記

自然さという不自然さ

自然という語を調べると、「人手を加えない、物のありのままの状態・成り行き」「人為が加わらないこと・本来そうであること」という意味だと書いてある。しかし、何かが自然である、あるいは不自然であるといわれるとき、人為が関わっていないことの方が少…

歪んだ光

誉れの笛は高々と、旅立つ人に歓呼を歌う。栄えの鼓は勇ましく、還らぬ人の背中を送る。 目のあるものはそれを見ない。耳あるものはそれを聞かない。賢人ばかりがそれを知らず、幾人ばかりの愚者だけが、物欲しそうに往来に立ちすくむ。 選ばれて、外されて…

名詩

名詩というは何よりも、鋭利な刃でなければならない。見るものの心臓を貫き、聞くものの脳髄を切り裂くものでなければならない。研ぎ澄まされた詩人の心が波紋をぎらりと光らせるのでないなら、どうしてその名を衆人の目に刻むことができようか。 名詩という…

3月の孤峰

またPV数が普通に戻ってる。3月だけが異常だったっぽい。それはそれで謎は謎のままなのだが、まぁいいや。そもそも誰がどうやってここにたどり着いているのかもわからんしな。

長いこと放置してたまにしか更新しないのに、なぜか先月辺りからPVが一桁増えている。毎月100いけばすごいぐらいだったのに1000とかいっててビビった。もちろん、いまでも過疎ブログには違いないのだが、何が起こってこんなことになったのだろうか。謎すぎて…

明らめる

思うように躰が動かせなくなった時、俺は悲しみを感じるだろう。俺は医者に尋ねたり、医学書を読むことで自身の不自由さの物理的原因を知ることができる。しかし、その事実を明らめることによって、躰を自由に動かしたいという願望まで諦めることができるだ…

わがまま

痛みを感じている人が「私は痛みを感じていない」と真摯に報告することはできない。それは強がっているとか、痛くないふりをしているだけだ。痛いものを痛くないというだけで、実際に痛くないようにすることができるわけではない。 喜びも一緒だ。確かに嬉し…

渇きの底

珉道者曰く「宗教者はこんなにも濡れたハートを持っている」。確かにそうかもしれない。ということは、やはり俺の求めるもの、思想的支柱となりうる何かは「宗教」ではないのだろう。俺はむしろ、心の水気をすべて取り除いたとき、渇ききった心がなおも拠り…

奇蹟

自然法則を超越した事象の可能性が「奇蹟」なのではない。それ自身驚くべき精緻さでもって運行する自然法則の実在こそが「奇蹟」なのである。神は、人が尊ぶべき神は、奇術師でもなければ詐欺師でもない。ネタを知られて焦るような二流をお前たちは崇めてい…

モデルの価値

何かの理想形としてのモデルの価値は、その実在性には依拠しない。理想気体の概念は、それが実際には実在しないにも関わらず、気体の性質や振る舞いを本質的に説明し、実現象をよく近似しうる能力を持っていることから、優れたモデルとして評価されている。…

なお残るもの

「宗教の自然化」ということばで何を意味しようと考えているのか、未だに自分でもあまり定かではないのだが、少なくともそれは、自然科学的世界観および価値観の中で宗教的な事物をどのように位置付けるのかという問いであろうと思う。そして、「自然化され…

錯誤

善良な人間が易々と死に、悪辣な人間がのうのうと蔓延る世間を悲嘆して、「こんな世の中はどこかおかしい」「何かが間違っている」と人はいう。しかし、善悪を平衡する天秤が実在しない以上、何か不特定のものを指してその是非を云々することに意味はない。…

数式コマンドのリンク回避

はてなブログでMathjaxを使ってTeXコマンドで数式を書いていると、ときたま数式画像が生成されないことがある。以前にも書いたことだが、これははてなキーワードへのリンクが勝手に貼られてしまい、コマンドとして解釈されないためだ。前回は小手先のトリッ…

空気

空気はなくてはならないものだ。空気は声を届けるからだ。心の震えが喉に伝わり、喉の震えを空気が運び、まだ見ぬ供の鼓膜を揺らす。空気がなければ、誰にも声など届かない。どれだけ喉を嗄らしても、どんなに力を込めたとしても、馬の耳さえそよともしない…

塵積もる

賢しい人は十五も数えぬ内から賢しい。愚かな人は五十路を過ぎても愚かなままだ。積み重ねた時は、そのまま素直に高さを上げるわけでも、重みを増やすわけでもない。血と熱と力の伴わない履歴の経路に、蓄積される質量の嵩は知れている。無為に流した時空に…

居所

哲学者の神は儀式の手順について語らない。生活様式の細かい指定も、民族文化が発展すべき方向性についても教えてくれない。一方、民衆の神は世界の神秘を語らない。存在の本質も、道徳の起源とあるべき姿についても、欠片ばかりのコメントすら呟かない。 信…

溜息

無神論者が必ずしも不敬虔でないことはスピノザが見事に論証しまた自ら体現した。逆にいかなる有神論者も不義暴虐をなしうることは昨今の世情と過去数千年の歴史がまざまざと物語っている。無神論者の犯罪者は当然存在するし、無神論者の慈善家も当然存在す…

ねつがくのちからってすげー!

熱学思想の史的展開〈1〉熱とエントロピー (ちくま学芸文庫)作者: 山本義隆出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2008/12/10メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 28回この商品を含むブログ (23件) を見る熱学思想の史的展開〈2〉熱とエントロピー (ちくま学芸文…

希うもの

ああ、まったくもって本当に、上手い文章というものを書いてみたい。書きたい。面白い文章が書きたい。ユーモアの光る文章が書きたい。含蓄のある文章が書きたい。人の興味を惹く文章が書きたい。書きたい。自分がいままで読んできた、震える程にすごいと感…

科学史っておもしろいよね

科学の発見作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2016/05/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る図書館にあったので読んでみた。ワインバーグ大先生と大栗先生の名前に釣られ…

困惑

自分がやることを思いつきもしないようなことを他人が平気でやっているのを見たとき、声を荒げて怒ったり、何も言えずに泣いてしまったり、他人事のようにニヤついてみたりする前に、刹那であっても人は驚いているように思う。常であればすぐさま怒りや悲し…

燠火のごとく消えぬもの

輝く呼び声が薄れ遠のき、禊(みそぎ)のみなもとの水涸(みずが)れた今となっても、人の心を戒め、揺動惑乱を生ぜしめる畏れは未だに心臓を走っている。蓋(けだ)しそれはすでに朽ち落ちた古の似姿を象(かたど)り、朧な影となった威力を鮮やかに縁(ふ…

詠みやすい文章

噺家の語りなんぞを聞いていると、惚れ惚れするほど歯切れよくことばを繋いでいく様に毎度感心してしまう。湯水のごとくことばを吐き出すなんてのは、少しばかり口が達者でありさえすれば素人様にだってできる真似だが、聞く者が思わず溜め息を吐いてしまう…

LaTeXiTがおかしいときは

自分用の備忘録。 LaTeXiTを使っていて、タイプセットはできるのに出力画像が真っ白で何も表示がないという状況になったので、今の今までずっと放置していた。今日になってまた使いたくなったので原因を調べてみたところ、アップデートによってコマンド設定…

人を殺さば鬼となり、鬼を殺さば鬼となる

徒然草にこういう一節があるそうだ。 人の心すなほならねば、偽りなきにしもあらず。されども、おのづから、正直の人、などかなからん。己れすなほならねど、人の賢を見て羨(うらや)むは、尋常なり。至りて愚かなる人は、たまたま賢なる人を見て、これを憎…

政に似て非なるもの

いきなり肩を叩かれて、振り返ると知らない人が立っている。彼はなぜだかにこやかに、片手を上げて挨拶をする。「スマーハ! アリンジャ・ニメロン?」――そんなことばは聞いたこともない。そもそも顔も見たことのない人間に聞き慣れない言葉を投げかけられる…

恐怖! 謎の微分方程式!?

先日、こんな出来事があったそうだ。 breaking-news.jp ニュースの内容も気にならないではないが、個人的には件の教授が書いていたという方程式の内容の方が気になった(一時間近くこれについて調べてしまった程度には)。とくダネ!で紹介されたところによ…

髪の長いの短いの

髪の長いと毛先が曲がる、はねる、逆立つ、くるくる回る。目ん玉擦るしすだれも邪魔で、洗うも拭くも一苦労。手櫛じゃどうにもまとまりつかず、壁や隙間に挟まり抜けて、悲しい痛みが乗っかかる。 短い髪なら手入れもいらず、洗う手間なぞないも同然、濡れて…

訪うもの

その声は、次第次第に大きくなり、厚みを増しては家の周りにとぐろを巻く。最初は薄靄のようだったのが、段々段々と形を得て、なんとはなしに姿の見えるようになる。細かったそれは太くなり、軽かったそれは重くなり、触れもしなかった遠くの陽炎から、じり…

ゆるし

「人の生には意味がある」「生まれてきたのには理由がある」と主張する人々は、逆説的に「意味のない生には価値がない」「理由もなく生まれてくるべきではない」ということも同時に主張している。彼らはなぜか「ゆるし」がなければ生命は存在してはいけない…