とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

神の価値

概念装置としての神には哲学的価値がある。しかし、思想としての神には道徳的価値しかない。原初のとき、言は神であった。この命題は隠喩としてではなく、そのままの意味で解釈されるべきであろう。世界を創造する神の力の片鱗は言語の力として見出されるからだ。ここに思想としての神は必要ない。神の御業に驚嘆することはあっても、そこに喜怒哀楽を持ち込んでしまってはいけない。それとこれはとは話が別なのだ。神秘は確かに存在する。世界は神秘に満ちている。だが、それにつけ込んで人々を従わせる言説を散布することは、神秘を使った詐欺行為でしかない。ことばが神秘を貶める。それがいかにありがたい法話や説教の類であっても、だ。