とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

醜い者

醜い者には首がない。ゆえに己を省みることがない。彼は盲であり、聾である。いかに自らが捻じ曲がり、歪み、奇形であるかを知らない。焼け爛れた肌を曝し、腐臭を放つ汚物に塗れ、それでもなおキィキィと甲高く、不快に騒ぎ立てることを止めはしない。彼は醜い己を見ることができず、聞くことができず、嗅ぐことができない。彼は盲であり、聾であるが、しかし唖ではない。ゆえに己が醜さを美しいといい、他の美しさを醜いという。我々は彼が度し難く醜いことを知っているが、彼はそれを知らない。盲聾の身にはそれを伝えることも叶わない。また、その爛れた皮膚に触れ、文字を書き、懇切とそれを教える者もいない。かくして彼は一人荒野に野垂れ死ぬ。固有の幻夢を唯是としたまま、ついにはことばも手放して、化物として葬られることになるだろう。