とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

真理<事実

真実の、本当の、真の、本来の……これらのような言葉遣いは、下劣で醜悪な現状に悲嘆し、それを否定してより上等で甘美な状態が存在するはずだと主張する者の物言いにしばしば現れる言い回しである。それは多分に願望を含んだ力のない空論であり、面の皮が厚い恍惚が恥ずかしげもなく行う現実逃避に過ぎない。
真理を探し求めるのではなく、事実を見定め明らかにするのでなければならない。現状をつぶさに観察し、類別し、検証する過程にこそ揺るぎないものがある。それは潜んでいるのでもないし、隠れているのでもない。単にそれは見えにくくなっているだけで、きっちり埃を落とし、覆いを外せば自ずと気づく卑近なことがらである。