とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

不死の呪い

閉じた瞼はこじ開けて、眼窩の縁に縫い付ける。
冷えた躯は晒しでくるみ、湯釜の中に放り込む。
絶えた鼓動は肋を開き、電池につないで動かそう。
垂れた手足は添え木にくくり、吊るした糸で操ろう。
さぁ、息を吹き返せ! 何も失われてはいないのだと胸を張るために。
さぁ、息吹を取り戻せ! 誰も死んでなどないのだと言い張るために。
骸に取り縋る親兄弟は追い払え、泣きじゃくる友と恋人を黙らせろ。
脅して作った笑顔を飾り、銃を押し付けて喜びの歌を歌わせよう。
悲しいことなどありはしない、「ボクたちはこんなに幸せなんだ!」
そのように装うために、そのように見せかけるために。
誰も死んではいけない。
誰も泣いてはいけない。



悲しみの中で輝く幸福は、幸福ではないのか? 失ってはじめて得られる大切なものなどないというのか。何もかも思い通りにならないと不幸だというのなら、人は明らかに不幸である。何もかも思い通りになる幸福だけが幸福なら、人はそれを手に入れることなどできないだろう。それを知らない年の頃なら無理もない。知っていてなお目を背けるのは人の自由だ。しかし、そのことに向き合った者に、どうにもならない現実を直視した者に、いいがかりをつけることには筋が通らない。
悲しい結末を嫌うのは勝手だが、そのわがままは、何も貶めることのできない空虚な独り言にしかならないよ。