とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

燠火のごとく消えぬもの

輝く呼び声が薄れ遠のき、みそぎのみなもとの水涸みずがれた今となっても、人の心を戒め、揺動惑乱を生ぜしめる畏れは未だに心臓を走っている。けだしそれはすでに朽ち落ちた古の似姿をかたどり、朧な影となった威力を鮮やかにふちどる熱い息吹である。我らは、失われたはずのそれを見る、毀たれたはずのそれを聞く。雨垂れが苔生した大岩を穿ち、星々の並びがすっかり様変わりしてしまうほどの年月としつきを経てさえも、割れた大岩は今以て頂に鎮座し、昏い恒星はなおも彼方から光を下ろしている。無常のつねを知り、無限のかぎりを知り、さりとて変転を覚えぬ我らは愚かに過ぎるのか。胸裡に流れる冷めやらぬ尊崇の風は、打ち立てられた御旗が翩翻へんぽんと歓ぶ姿に零れる涙は、いずれも茫漠たる幻でしかないのか。虚ろな力を前にして、我らは頭を垂れ、膝を屈めるのをとどめ得なかった。