とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

奇蹟

自然法則を超越した事象の可能性が「奇蹟」なのではない。それ自身驚くべき精緻さでもって運行する自然法則の実在こそが「奇蹟」なのである。神は、人が尊ぶべき神は、奇術師でもなければ詐欺師でもない。ネタを知られて焦るような二流をお前たちは崇めているというのか? 神の威力とは、人々を驚かせ、度肝を抜くための大道芸ではない。水の入ったコップを落とした時、ガラスが割れてバラバラになること、飛び散った水が水滴となり、床にぶつかり濡れ広がること。これらすべてが「奇蹟」であり、「神の息吹」である。目新しい詐術を棄て、古めかしい事実に立ち還るべきだ。預言者たちが、風が語り、空が怒り、炎が踊るというとき、それは騙りでも偽りでもない。「ちょっとした文学的修辞」に過ぎない表現を真に受け、軽々に超自然現象だなんだと右往左往することは、彼らの言葉を蔑ろにし、恣意的に過ったメッセージを読み取ろうとする悪意ですらある。「奇蹟」をプロパガンダに使ってはならない。それは本来素朴で率直な感動の表れであったはずである。