とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

レイヴン、極秘の依頼だ

青春時代に触れたコンテンツ(マンガ、小説、アニメ、ゲームその他もろもろ)がその人の人格および思想の形成に対して甚大な影響を及ぼすというのは広く流布した「俗説」だと思う(だからこそゲーム脳やらオタクバッシングやらの過剰に熱狂的な運動が古今東西絶えない訳で)。その真偽はともかくとして、今の自分を方向付けた多くのコンテンツの中から、最も影響力の強いものをいくつか列挙するとすれば、個人的にアーマードコアシリーズを外すことはできない。なかんずく、PS2時代のAC2からAC3SLまでの作品群にはかなり思い入れがある。それはゲームを人よりやりこんだという意味ではない。国家が弱体化した近未来、統治機構として台頭した巨大企業が、私兵や傭兵を駆使して日夜血生臭い勢力争いに明け暮れるという、その暗い世界観がいたく気に入ったのである。もちろん、ACシリーズだけがそのような雰囲気を持っているわけではないし、その起源であるわけでもないが、この手の世界観の作品を挙げろといわれたら俺は真っ先にACシリーズの名前を出す、ということだ。
なぜこんな益体もない話をしているかというと、家弓家正さんの訃報を知ったからだ。ACシリーズは初期段階から豪華な声優陣を起用していることで有名である。正直にいうと、俺はACの操作そのものよりも、ミッション前のブリーフィング画面で聞ける、これら名優たちの得も言われぬ演技と声が一番好きだったりする(声豚乙)。一番のお気に入りはAC3におけるクレスト代表の榊原良子さんだが(特☆例☆的☆に☆)、AC3SLでのクレスト代表をやられた家弓家正さんの声も思い出深い。家弓さんの代表作は枚挙に暇がないだろうが、俺にとってはクレスト代表もその一つだ。「邪魔する輩は容赦なく潰してこい」と指示するときの極悪な演技もいいが、「AIが暴走して自分たちが建造した要塞に入れなくなったから中の自律兵器全部ぶっ壊してきて」というミッションでの演技が個人的なツボだ。表面上は威厳たっぷりだが、その実焦りと恐怖でオロオロしてる感じがそこはかとなく出ていて、心に残っている。
家弓家正さん、素晴らしい演技をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。
その内、銀河声優伝説級の名優たちが軒並み亡くなってしまうのだと思うと、惜しむ気持ちで一杯だ。役者業界はもっと「いい声のおじ様」を涵養すべきだと思うのだが……(イケメンボイスも萌え萌えボイスも大事だが、最も得難く貴重な声はそれらではないだろう。血の気も失せる悪役声、腹に染みこむ紳士の声こそ必要だ。男惚れするおっさんボイスこそ至高である)。