とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

複素数の平方根

注意

以下の記述は私的な備忘録であり、内容の正確さに関しては一切保証いたしませんので、悪しからず。

背景

ある日突然、無性に次の微分方程式が解きたくなったとする。
\begin{align}
\label{eq:dif}
y''''-3 y'' + 6y =0
\end{align}人生、何が起こるか分からないので、まあ、そういうこともあるだろうと思って納得する。幸い、これは定数係数の同次線形微分方程式である。慌てることはない。$e^{\lambda x}$を解として仮定し、$\lambda$に関する特性方程式を作って解いてやれば一般解が求められる。
\begin{align}
\label{eq:char}
\lambda^4 - 3 \lambda^2 + 6 = 0
\end{align}しかもありがたいことに、これは四次方程式であって、解の公式が存在するので代数的に解くことができる。ただし、今回の場合はそこまでしなくてもよい。これは複二次式と呼ばれる形をしているので、$q=\lambda^2$とおけば、$q$に関する二次方程式に変換できる.
\begin{align}
q^2 - 3 q + 6 = 0
\end{align}みんな大好き二次方程式の解の公式より、
\begin{align}
q = \frac{3 \pm \sqrt{9-24}}{2} = \frac{3 \pm \sqrt{15}i}{2}
\end{align}したがって、特性根$\lambda$は次の4つの複素数になる。
\begin{align}
\lambda = \pm \sqrt{ \frac{3 \pm \sqrt{15}i}{2} }
\end{align}というわけで、元の微分方程式の一般解は$C_i$を任意定数として次式で表される.
\begin{align}
y(x) = \sum_{i=1}^{4} C_{i} e^{\lambda_{i}x}
\end{align}……ところで、これは一体どういう関数なんだろうか。待てよ、そもそもルートの中に$i$が入ってるけど、これって何よ?

虚数平方根

気になったので調べたところ、すぐさま下の参考ページ(1)に辿り着いた。虚数平方根
\begin{align}
\label{eq:i}
\sqrt{i} = \pm \frac{1+i}{\sqrt{2}}
\end{align}
である。なぜそうなのかは参考ページに書いてあるのだが、学ぶとは真似ぶことである。勉強のため、下記参考ページの内容をここに引用することにする。
そもそも平方根の定義は何だったかというと、「2乗すると根号の中身になるもの」だ。したがって、$z=x+yi \ (x,y\in \mathbf{R})$として、$z^2=i$を満たす$x,y$を求めればよい。これより、
\begin{align}
z^2 = (x+yi)^2 = x^2 - y^2 + 2xyi = i
\end{align}実部と虚部を比較すれば、
\begin{align}
\label{eq:1}
x^2 - y^2 &= 0 \\
\label{eq:2}
2xy &= 1
\end{align}式\eqref{eq:1}を因数分解すれば、$(x-y)(x+y)=0$より、$x=\pm y$。しかし、式\eqref{eq:2}より、$x=-y$とすると$y$が複素数となり方程式を満たさない。したがって、$x=y=\pm \frac{1}{\sqrt{2}}$。この結果を$z=x+yi$に代入することで、式\eqref{eq:i}の解を得る。
(ちなみに他にも色々やり方があるらしい。参考ページ(2)を参照のこと)

複素数平方根

さて、俺が知りたいのは純虚数平方根ではなく、一般の複素数平方根
\begin{align}
\sqrt{ a + b i } = x + y i
\end{align}を満たす$x$と$y$は何なのか、ということだった。実はこれも参考ページ(1)に載っている。やり方は上述の方法と同じなので結果だけ引用する(ただし、連立方程式を用いる方法は立方根以上の累乗根の計算には使えないらしい)。
\begin{align}
z =
\begin{cases}
\displaystyle \pm \frac{\sqrt{a+\sqrt{a^2+b^2}}+\sqrt{-a+\sqrt{a^2+b^2}}i}{\sqrt{2}} & b > 0 \\
\displaystyle \pm \frac{\sqrt{a+\sqrt{a^2+b^2}}-\sqrt{-a+\sqrt{a^2+b^2}}i}{\sqrt{2}} & b < 0
\end{cases}
\end{align}たとえば、式\eqref{eq:char}の特性根の1つ$\sqrt{(3+\sqrt{15}i)/2}$は上式において、$a=3/2$、$b=\sqrt{15}/2$とすれば、
\begin{align}
\sqrt{ \frac{3 + \sqrt{15}i}{2} } &= \pm \frac{\sqrt{3/2+\sqrt{9/4+15/4}}+\sqrt{-3/2+\sqrt{9/4+15/4}}i}{\sqrt{2}} \\
&= \pm \left( \frac{\sqrt{3+2\sqrt{6}}}{2} + \frac{\sqrt{-3+2\sqrt{6}}}{2}i \right) \\
&\approx \pm \left( 1.405 + 0.689i \right)
\end{align}となる。符号については正をとればよいと思う(平方根の主値っていうぐらいだし?)。結果はWolframAlpha教授のものと一致したのでよしとしよう。要するに、式\eqref{eq:char}の特性根は4つの複素数となるので、式\eqref{eq:dif}の基本解の形はすべて
\begin{align}
y(x) = e^{\mathrm{Re}(\lambda_{i})x} \left\{ A \cos \left( \mathrm{Im}(\lambda_{i}) x \right) + B \sin \left( \mathrm{Im}(\lambda_{i}) x \right) \right\}
\end{align}で表される。ただし、具体的な式を厳密に書いたらものすごく長い式になってしまう。実際、WolframAlpha教授に答えを聞いた所、
f:id:iqujack-lequina:20141213195331g:plain
が答えとのこと。多分、逆三角関数とかがごちゃごちゃしてる部分が上述した複素数の実部と虚部を分離する計算の厳密解なのだろうと思う(極形式で表したときの値とか含まれてそうだと思った(小並感))。この結果をさっきの形式にまとめると、
\begin{align}
y(x) &= e^{\alpha x} \left\{ c_1 \cos \left( \beta x \right) + c_2 \sin \left( \beta x \right) \right\} \\
&+ e^{-\alpha x} \left\{ c_3 \cos \left( \beta x \right) + c_4 \sin \left( \beta x \right) \right\}
\end{align}となる。ただし、
\begin{align}
\alpha = \sqrt[4]{6} \cos \left( \frac{1}{2} \tan^{-1} \sqrt{\frac{3}{5}} \right) \\
\beta = \sqrt[4]{6} \sin \left( \frac{1}{2} \tan^{-1} \sqrt{\frac{3}{5}} \right)
\end{align}
すなわち、特性根は$\lambda=\pm (\alpha + \beta i)$の形にまとめられるということだ(重複度2の2重根?)。まぁ、こう書いてしまえばそこまで長い式でもないか。ただパラメータを含んだときにこういう形にしてくれるかはわからんな。

まとめ

よくよく考えらたらそんなに難しい話じゃなかった件について。なんで俺はここまでうろたえたのか、狼狽してしまったのか(ダイねえちゃん風)。予習復習は大事ですね、ホント。