とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

寂静

どんなに耳を澄ましても、あなたの声は聞こえない。どれほど両目を凝らしても、あなたの顔は見つからない。ガラガラとうるさい街の喧騒に、ギラギラとどぎつい電飾の点滅に、あなたは何も残さない、何も謳わない。望みもしない宣伝ばかりがどよどよと押し寄せ、微かな徴を見る影もなく押し流してしまう。使えもしない符号がやたら見事に配列するけれど、肝心要の筆使いはひび割れのように弱々しいまま。ここはこんなにもゴチャゴチャしていて、引き出しが出しっぱなしの工具箱みたいに散在しているのに。誰も彼もが大声で、勝手気ままにぐるぐると口車で発電しているのに。あなたはどこにもいないのだろうか。あなたを探すのは徒労なのか。とても賑やかで騒がしい、活気に充ち溢れた空間の中に、ぼくは延々と配位しない。滑らかな包囲はいかにも取っ掛かりがなく、深爪の連中はスベスベと落体に身をやつす。あまりにもやかましい静けさの中で、耳鳴りが痛々しく響くものだから、ぼくはひたすら寂しさだけに心を傾けた。