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とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

孤児

お父さんがいないなんてかわいそうね、と親戚のおばさんがつらそうにいった。お母さんがいなくてさみしいだろうに、と近所のおじさんは悲しげだった。気をしっかり持つんだ、と学校の先生は励ましてくれた。みっちゃんとりょうくんは何もいわずに、大事にしていたヒーローの人形を僕にくれた。
でも、おばさんは親のいない子がまともに育つはずないわと眉をひそめていた。おじさんはあの親たちの子じゃあ仕方ないなあとため息をついていた。先生は保護者が面倒見てくれないとこっちが困るんだと愚痴をこぼしていた。みっちゃんとりょうくんは僕と遊んだせいで他の子たちから嫌がらせを受けていた。それから、二人は僕に話しかけてこなくなった。
僕は小高い丘の上にある両親の墓の前にいき、これからどうするかを考えた。里親を見つけられれば、みんなはまた優しくしてくれるだろう。ほっとしたり、喜んだりしてくれるだろう。なら僕は新しい親を探しにいった方がいいのだろうか?
気がつけば、いつからか背の高い痩せたお兄さんがとなりに立っていた。長い髪の毛はボサボサで、とげとげした黒いひげが顔の半分ぐらいを覆っている。親がいないのか、とお兄さんは呟いた。少し怖かったけど、僕は頷いた。お兄さんはそうかといって長いこと黙っていた。日が傾きかけた頃、お兄さんはまた口を開いた。お前のような孤児を引き取ってくれる場所を知っている、そこにいる子供はみんなお前と同じで親がいないからすぐ友達になってくれるだろう、お兄さんはそういった。お兄さんには親がいるの、と僕が尋ねると、お兄さんは首を振った。いようがいまいが大したことじゃないさ、親だっていつかは死ぬんだから。僕の方を見て笑うお兄さんの笑顔はとても優しそうだった。僕はお兄さんについていくことにした。
お兄さんに手を引かれ、僕は山道を歩き出した。街の方とは反対の、丘を越えた隣町の、そのまたずっと遠くにあるという、孤児院を目指して。振り向くと、大きな夕日に照らされて、街は燃えるように赤く染まっていた。血のプールみたいだ。僕がいうと、お兄さんは高らかに笑った後、夕焼けが赤い理由を教えてくれた。僕はレイリー散乱の話を聞きながら、緩やかなくだり坂をゆっくりと下りていった。