とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

首振りすぎて顔が痛い

右を見ても狂騒、左を見ても騒擾……大声を出した方が勝ち、上手い嘘をつける奴が有利、嘲り笑うための語彙力が豊富であればなおよし。自分に都合がいい情報は積極的に公開し、弱点となる事実はひた隠す。頷けば善人、背けば悪人、そんな態度は程度の低いフィ…

機嫌の悪い日は生理、という物言いの根本

肋を開かれて正気でいられる人間もそうそういない。己が太っ腹をかっさばけばピンクのはらわたがのたくっていることに気づくことの方が少ない。糞袋の畜生でしかないヒトは、普段は自分を「人間」だと思い込んでいる。しかし、人間でいられる時間、人間であ…

乾いた恭順

道徳に従うべきであることの根拠とされる事由がことごとく無化されてしまったのだとしても、われわれは道徳に従うしかないという理由だけで道徳に従うしかないのではないか。道徳を守るべき積極的な理由のすべてが骨抜きにされてしまっても、頼りない消極的…

秘匿によって

汗ばむ掌後ろ手に、泳ぐ視線はうつむいて、声の震えを押し隠せ。われらは妙なる秘匿によって涙の川に参列する。無病を装い、無謀に扮し、無垢なる無常と見せかけよ。誰も彼もを欺いて、あらゆる嘘を押し通せ。われらの秘匿は綱渡り、命の綱での曲芸である。…

木を隠すなら森の中、人隠すなら灰の中

見るも哀れな痛みの代わりに、あなたは秘め事を胸に潜めるべきだ。つまりそれは完全なる避難の計画、祝福と喝采の褥に安らぎうる数少ない方途の一つ。入念に準備され、周到に用意された思考と想像を、あなたは集め、積み上げなければならない。しばしば染み…

唐突な幸福

本当に唐突な幸福だけが救いとなる。何の前触れもなく、何の兆しもなしに、全てを奪い去り、置き換えてしまう衝撃力に貫かれて停止する。気づかぬまま、知らぬまま、ご大層ないいわけを覆い隠し、有象無象の前例の中に埋もれる同情すべき複製品に成り果てる…

千の口に列ねる

願わくば、沈黙の死の下に沈むのではなく、饒舌な死の上に安らぎたい。自分の意思が身近な人に誤解されたまま、自分の意志の内実が十分に知られぬ内に、自分の遺志の詳細な注釈も残さず、口をつぐんで無惨に頓死を迎えたくなどないのだ。生きている時分にさ…