読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

水面を叩く狢

お前の頭はおかしい、お前は間違っている、お前には理性がない、お前のふるまいは非常識だ、お前は野蛮な獣と同じ程度の生き物だ、お前は――青筋を立て、拳を振りかざし、あらん限りの叫び声でもって口汚く罪人を罵る彼らは、自分のその姿がどのように他人の目に映っているのか、気にも留めないのだろうか。俺は罪人に同情しているのではないし、罪人をさばくなといっているわけでも当然ない。しかし、コロッセウムの剣奴の死合に興奮を覚えるような低俗野卑な感性を何とかしない限り、彼らは鉄格子を掴んで揺らしながら歯を剥き出しにして威嚇をする檻の中の猿と違いはないように俺は思う。己が映し身と知らず水面を幾度も叩く狢と同じだ。狂気を弾劾する者の瞳にこそ昏い狂気の光が見え隠れする、というのはよくある話だ。よくある話だからこそ、対策の一つや二つ取れないのかと俺はいっているのである。