とつとつとしてろうとせず

ひまつぶしにどうぞ。

知らないだけ

知らないだけよ、そう、知らないだけ。あなたが悪いんじゃないのよ、だって知らないんだものね。わたしがあなたを愛してること、あなたを大事に想っていること。わたしはあなたの幸福を願っているし、あなたの心が満たされるように祈っているわ。あなたのためなら何だってできる。いいえ、あなたが知らないだけで、わたしは何度もあなたのために働いたのよ。わたしはあなたのやることがうまくいくように、そっと手伝いをしてきたの。たくさんしてきたわ。仕事に失敗したときだって、恋人に逃げられたときだって、拾った財布をそのまま自分のものにしたときだって、わたしずっとあなたのそばにいたわ。いつもあなたのことを見ているのよ。嘘じゃないわ、気づいてないだけよ、そう、気づいてないだけ。あなたはわたしを知らないかもしれないけど、わたしはあなたを知っているもの。そう、よく知っているわ。あなたが何を考えて、何を感じて、何が好きで何が嫌いで、何が得意で何が苦手か、知らないことなんてないわ。全部お見通しよ。わかってるわ、わたしはあなたを理解している、わたしだけが本当にあなたを、本当のあなたを理解できるのよ。あら、震えているの? いいわ、いまはおいきなさい。どこへなりとも自由にいきたい場所にいくといいわ。見たいものを見て、聞きたいものを聞けばいい。わたしはいつでもそこにいるし、どこにいってもあなたの近くにいる。あなたの前で、いつもあなたに語りかけるわ。見えないだけ、聞こえないだけよ。あなたを見放したりしないわ、本当よ。これからもずっとあなたのことを見守ってあげる。あら、泣かなくたっていいのよ。怖いのね、でも大丈夫。いつか全部わかるようになるわ。そうしたら全部うまくいくようになる。あなたは忘れているだけよ、そう、忘れているだけ。あなたもいつか思い出す、きっと思い出してくれるわ。わたしがあなたを愛していること、そして、あなたもわたしを愛してくれてるってことを、ね。



な、気持ち悪いだろ? お前らこれと同じこといってんだぜ。違うか?