塵積もる
賢しい人は十五も数えぬ内から賢しい。愚かな人は五十路を過ぎても愚かなままだ。積み重ねた時は、そのまま素直に高さを上げるわけでも、重みを増やすわけでもない。血と熱と力の伴わない履歴の経路に、蓄積される質量の嵩は知れている。無為に流した時空に応じて、ただ埃と塵だけが薄く薄く裾野を広げるように厚みを増していく。長く年経て生き長らえて、積み上げた諸々が芥に尽きるはあまりに寒々しい。歴史の重量は力の偉大さと等価である。打ち立てられないもの、刻みつけられないもの、痕が残るほどに押し込まれないものは、誰にも記憶されないままに吹き散らされてきらびやかに空虚を泳ぐ。忘れられることすら端から不可能な何かに成り下がったものは、誰にも顧みられない、誰にも引用されはしない。
何も知らない若者が、何かを知ったような顔をしている大人を馬鹿にしていいのはそれが理由だ。精々両の掌に、乗せられるだけのありったけをかざして、得意げに微笑むことのできるようにならなければね。